夢と現実ー彼女が本当に叶えたこととは?ラブライブ!2期第4話

 ラブライブ!2期第4話「宇宙No.1アイドル」をあらすじとともにざっと振り返ってみよう。以下は「ラブライブ!TVアニメオフィシャルBOOK」(リンク先→ラブライブ! TVアニメオフィシャルBOOK 発売のお知らせ | lovelive-news)より引用。

 地区予選突破後、なぜかにこが練習を早退するように…。その秘密を探るため、にこを尾行する穂乃果たちは、にこの妹弟たちと出会う。にこが家族に自分のことをスーパーアイドルだと偽っていたことを知ったメンバーたちは、彼女の心情をくんで、にこの妹弟たちを学校に招き、にこのワンマンライブを開く。感動するにこは、妹弟たちにμ'sの一員として輝くことを宣言!

…とまあ、このような具合だ。もちろん、この文章だけでも2期4話のさまざまなシーンがよみがえってくるのだが、これだけではこの話は語りつくせていない!と感じてしまうのは私だけだろうか?最初から振り返ってみよう。

 話はμ'sがラブライブ予選突破を確認する場面から始まる。喜ぶメンバーの傍ら、一人不安げな表情のにこ。本選に向け一層気合が入るメンバーを尻目に、一人練習に行かず帰ってしまう。「練習は嘘をつかない」と語っていた彼女がなぜ?

f:id:ksnagano-77:20160722004442j:plain何やら浮かない表情のにこ。彼女は何を思うのか?

ここで注目したいのが、この1枚の画像。

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予選の結果が気になるμ'sにとっては一層印象に残る画像であろう。当然、にこもこの画像を目にしている。また、にこが不安げな表情を浮かべるのはこの直後。となると、この画像を見てにこは何か思うところがあったのだろうか? 

 秘密を探ろうとメンバーはにこを尾行するが、追いかけっこの末、逃げられてしまう。偶然妹のこころに遭遇し話を聞いているうちに、にこ=アイドル、μ's=バックダンサーという矢澤家の設定が明らかになる。ここから話の中心は、にこが練習に来なかったことから、矢澤家におけるμ'sの設定に移り替わっていく。

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電話越しにキレるクール三人組。

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怒る二人の表情。コワい…

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「ばっくだんさ~」

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「アハハ、こんにちわ…」と返すことりの表情がまた良い。

「どうしてこんなに信じちゃってるんだろう?」と花陽。「μ'sの写真や動画を見れば、私たちがバックダンサーでないことぐらいすぐわかるはずなのに…」と海未。「ねえ虎太郎君、お姉ちゃんが歌ってるとことか見たことある?」とことり。ここで虎太郎が指さしたのがこの写真。

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「合成!?」驚くメンバーたち。しかし先に注目した画像と比べてみるとわかるように、入れ替わったのはにこと穂乃果だけで、ほかの7人の立ち位置は全く変わっていない。

 ようやくにこを捕まえ、事情を聴くメンバーたち。にこが練習を休んだ理由は早々に明かされるが、μ'sメンバーの関心はどうやらそこではないようだ。「それよりどうして私たちがバックダンサーということになっているのですか?」と海未。「そうね。むしろ問題はそっちよ。」と絵里。

「いやだなあ、みんなこわい顔して…」とにこ。しかし、怖い顔をしているのはメンバー全員ではない。穂乃果だけがなんとも絶妙な表情を浮かべている。

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穂乃果からは、怒った表情を見てとることはできない。

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 にこ、穂乃果を除くμ'sメンバー7人にとっては「合成」の写真も現実の写真と全く同じ立場である。虎太郎はそれを見て「にこ=アイドル、他の8人=バックダンサー」と信じている。したがって、虎太郎がμ'sの本当の写真を見たら、「穂乃果=アイドル、他の8人=バックダンサー」と考えてしまうのではないか?「私の家で私がどう言おうが勝手でしょ…」とメンバーから目をそむけ話すにこ。確かにその通りだが、問題は家庭内にとどまるものではない。μ'sの「1人のアイドルと8人のバックダンサー」とも見られてしまう1対8の構造が、「合成」写真と虎太郎の指摘によって顕になってしまったのだ。「合成」写真における「バックダンサー」の指摘が現実問題だった7人と、そうでなかった穂乃果。彼女たちの表情の違いはここにあったのだろう。

 にこもこの現実に気が付いている。「スーパーアイドル矢澤にこ」という設定を信じ夢の中にいるのは、にこの妹弟たちだけである。

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 穂乃果の思い付きにより、妹弟たちを連れて屋上でにこのライブを開くことに。にこはステージで妹弟たちに「スーパーアイドルにこは、今日でおしまいなの」と矢澤家の設定終了を告げる。「でも、皆さんはアイドルを目指している」「バックダンサー」と今までの設定の認識で返す妹弟たち。「そう思ってた。けど違ったの。」ここでのにこの発言は、今まで一緒に頑張ってきたμ'sの8人=バックダンサーだと思っていた、と解釈すると引っかかる。μ'sの現状=1対8の構造、すなわち穂乃果を除く8人がバックダンサー、穂乃果の引き立て役にしかなっていないことを自覚していたからこそ、口に出した言葉だろう。

 妹弟たちに語り続けるにこがステージで歌い始める前に、後ろにいた8人のメンバーはステージから捌けていく。なぜか?「にこ=アイドル、8人=バックダンサー」の設定の最後であるならば、彼女たちはバックダンサーとして踊り、その設定を全うしてやるべきだったのではないか?

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その答えは、先に述べた1対8の構造を打ち破ることにある。にこの設定は、穂乃果と8人のバックダンサーという現実に乗っかったものでしかなく、そんな嘘をついている限り、この現実=にこもバックダンサーの一員でしかない、ということもいつまでも打ち破ることはできない。にこ自身がμ'sのアイドルになるために、にこは偽りのスーパーアイドルの座を降り、現実のバックダンサーを消さなければならないのだ。

 にこは屋上のステージで、「自分がスーパーアイドルとして輝き続け、妹弟たちの”夢”を保つこと」「μ'sの”現実”=1対8の構造を打ち破り、宇宙No.1ユニットμ'sの一員として一人一人が輝けること」を同時に叶えたのだ。冒頭のシーンで予選敗退という”夢”が打ち破られ、予選突破という”現実”が保たれたことが強調されたのも、このことと対比になっているのかもしれない。